原宿という流行の発祥地は、常に人々を魅了し続けています。
現在、新型コロナの蔓延により明治通り沿いという商業一等地と言える路面店においても、閉店のお知らせ・テナント募集看板を見かけました。早くこのコロナ不況が明けて、再び物販・飲食店舗がにぎわう姿を見たいと感じました。
さて、神宮前の交差点からお洒落なショップが建ち並ぶ明治通りを渋谷方面に少し歩くと、今回競売となっている
神宮前コーポラス
があります。築年数としては、ヴィンテージマンションの条件は満たしています。
が、今までの競売で見てきたヴィンテージマンションと比較すると、意匠性を感じません。例えるなら、公団団地マンションという表現が適切です。
また本物件は
「借地権」
であるという点が更に検討を難しくしています。
更に本建物建築後に土地の分筆がなされ、
借地契約面積:1,325.41㎡に対して、
延床面積:13,485.38㎡と大幅に建蔽率&容積率超過となっていますので、再建築の際には(お寺の余剰容積率移転等が無い限り)同規模の建物の建設は出来ません。
場所は良いけれど、築古で意匠が陳腐+借地権物件+再建築の際はどうなる?という難しい案件を皆さんがどう評価するか、本競売で見ていきたいと思います。
1.物件所在地
物件前の明治通り沿いにはタケオキクチが入居する低層店舗があります。
借地権の底地人(地主)は、本物件お隣りのお寺「慈雲山 長泉寺」です。
借地権は、いわゆる旧法の土地借地権です。
当初契約期間は1971年10月1日より30年間で、現契約は更新しており2001年10月1日~2031年9月30日までとなっています。
なお、賃借権を譲渡する場合、借地権譲渡承諾料として譲渡価格✕1.0%(競売時5.0%)の負担が生じます。
2.競売物件概要
①神宮前コーポラスについて
1階・2階は店舗仕様となっており、3階以上が住居・事務所・SOHO仕様となっています。
エントランスはリニューアル工事がなされておりシンプルな清潔感のあるデザインとなっています。
エントランスにオートロックが無く、住居としてのセキュリティよりも事務所使用としての利便性は高める仕様となっている点からも、実態の利用形態としては事務所が多いのであろうと感じました。
共用廊下は、外観の見た目を裏切らない低仕様でした。
建物は
②専有部について
100㎡を超える大きな部屋であり、実質2面に面した角住戸です。なお、寄宿舎用途となっているのは謎です。
競売評価書にて、LDKと浴室が写されていました。
フローリングに変えられており、レンガブロック調のシール?が貼られているように見受けられます。
浴室は、昔のラブホテルのような色調ですが使われていないのかもしれません。
前入居者が2021年5月に退去してからは、空室のままで所有者が管理しているとのことです。
3.入札価格査定
以上を基に今回の入札金額を査定していきます。
競売評価書においては、売却基準価格として4,256万円(129万円/坪)、競売減価(▲20%)前で5,600万円(170万円/坪)と評価しています。
最有効使用の判定として、ぱっと見はマンションなので自用物件かなぁと現地調査前は思っていたのですが、
①建物の利用方法が事務所向きであり、また仕様・デザインが個人の購入意欲をそそらないこと
②借地権であり、また建物の築年数が古いことから住宅ローン融資が下りないと考えられること
③場所柄、事務所・SOHOとしての賃貸需要が期待できること
から、収益物件としての投資が最有効使用であると判断しました。
なお、本物件単独で投資用不動産のローンを引くことは困難であるため、自己資本を出せる人・会社での借り入れ余力がある法人に限定されるなど、市場性が劣ります。
神宮前コーポラスの取引事例をレインズで検索したところ、複数の部屋の取引事例を得ることが出来ました。
2021年の37㎡の成約事例はマンション仕様のオーナーチェンジ物件でグロス利回り8.0%、254万円/坪、
2020年3月の事例は同じ面積で事務所仕様のオーナーチェンジ物件でグロス利回り9.4%、168円/坪
で成約しています。
また、現在募集しているのは55.49㎡の4,280万円(255万円/坪)で、マンション仕様でオーナーチェンジ物件:グロス利回り5.8%(賃料単価が安いので低利回り)です。
想定される賃料水準として、同物件の910号室の募集条件は49.5万円(1.5万円/坪)で2015年に事務所仕様にリノベーション工事した部屋です。
月49.5万円(594万円/年)で
グロス利回り10%求めると5,940万円、
グロス利回り8%で7,425万円
グロス利回り6%で9,900万円
となります。
築50年と建物の寿命もそう長くない事、借地権が再建築で滅失することは無いにせよ、容積率オーバーの問題があることから、早期に投資金額を回収したいという投資家の気持ちが強いものと考えられます。
以上より、投資利回りとして7%超、取引事例も参考に本物件の出口価格としては、坪250万円で8,235万円程度と考えられます。
取引事例はリニューアル工事等が済んでおり、テナントが付いた状態での売却金額となっているので、上記出口価格で販売することを前提に入札価格を査定していきたいと思います。
大きな費用項目として
・借地権譲渡承諾料
・賃貸仲介手数料
・リニューアル工事費用
・売却時仲介手数料
を試算の上、再販業者の利益を控除して入札価格を
5,928万円(180万円/坪)*基準価格✕1.39
と査定しました。
入札結果を待ちたいと思います。
仲田リアルエステート㈱
080-6631-3939
2021年12月18日更新
結果発表を迎えました。
66,140,000円(201万円/坪)
入札参加者は8名と、取り組み出来る会社が少ないことを示しています。
6,600万円で落札された方は、もう少し高い値段で出口を迎えることが出来ると想定しているのだろうと類推します。
或いはリノベーション工事をして、グロス利回り8%程度で保有することを想定した投資目線かもしれません。
仲田リアルエステート
080-6631-3939
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