週1回の出勤で済むようになったなど、リモートワークの普及により憧れの湘南ライフも現実的になった人もいるでしょう。

私もかつては湘南に住むことを夢見て「湘南スタイル」(公式HP)という本を集めて、毎日のように眺めていました。

また親戚が片瀬で戸建住宅を探しており何軒か一緒に内覧をしたこともあり、常に魅了される場所です。

 

その魅力あふれる湘南の稲村ケ崎駅を最寄りとする物件が競売となっています。

1つは、戸建の底地(戸建の為の借地権が設定されているその土地の所有権)

もう1つは、更地

でその2物件は隣接しており、個別ないし纏めて購入することが可能です。

 

場所は鎌倉市稲村ガ崎1-9-8です。

海まで3分という海好き・サーファーにとっては夢のような立地でしょう。

 

 

今回は、その内の1つの底地物件について検討したいと思います。

(更地物件は業者が取得し、戸建住宅を建てるという王道なストーリーかと思います。)

 

なお、以前東京神田の底地案件の検証をしていますので、底地に興味がある人はこちらもご参照ください(神田底地)。

 

対象地は、地番:263-4です。

謄本を確認してみると、2010年4月に現所有者に相続されており、本件土地を含む相続税支払い滞納により

債権額:8,769万円

利子税:2,336万円

の抵当権が財務省により設定され2019年11月に解除されましたが、時間を交錯する形で2018年5月に福島銀行による仮差押え、2019年6月に競売開始決定という流れとなっています。

 

 

接道条件については、対象地北西側に未舗装の幅員1.6mの私道(地番263-5)であり、当私道が建築基準法の42条2項認定を受けた道路となっています。

 

DJI Pocket2を購入したので、当該道路を動画撮影して来ましたのでシェアさせて頂きます。

(動画編集等は勉強していきます。)

 

つまり、敷地の後退(セットバック面積:14.4㎡)することで、建物の再建築が可能な土地となります(鎌倉市役所にて確認済)。

なお当該私道は本物件の所有者が保有しておりますが、土地賃借人との通行に関する取り決めは無いと物件概要書に記載されています。また鎌倉市では42条2項道路認定に際しての書類は特にないとの事で、証明書を確認する事は出来ませんでした。

仮に当該2項道路認定を解除(抹消)する場合は、当該道路の利用を供する利害関係人全員からの承認が必要となると考えられますので、将来的にも当該2項道路認定が無くなり建物の再築が出来なくなる可能性は低いものと考えられます。

 

また立地条件について触れなければならないのが津波の被害だと思います。

南海トラフ地震と呼ばれる地震の規模:M8~M9クラスの地震が30年以内に70%~80%の確率で起こると言われていますので、鎌倉市等から公表されている津波に関する資料を確認してみました。

対象地には津波が10分で到達し、その浸水高は5.0m~10.0mと予測されており、1種低層の建物高さが10mである本地域では建物全体が津波に襲われる可能性が有ることを示しています。

地震大国の日本ですので、避けることは出来ないのでしょうが目を背けたくなるような情報です。

 

さて、現地調査での写真を加えて物件詳細について見ていきましょう。

稲村ケ崎は、七里ヶ浜と比較すると落ち着いており地元民がゆったりと生活するような印象を受けました。海沿いの国道から1本中に入ると、環境が一変し木々の生い茂る林間地という雰囲気があります。

道路も3m程度の片側通行の狭い道路で多く、また築古の建物が多いためかセットバックも進んでいないように見受けられました。

 

本対象地も接道する42条2項道路手前の鎌倉市道が幅員1.8mとなっているので、対象地がセットバックしても敷地内に車を乗り入れることが現状できません。

 

下の写真が対象地(底地)に建つ建物です。

謄本を確認しましたが、建物の築年数は不明です。外観からは推測するに築50年程度経年していると思いますが、扉・窓は更新されている事が分かります。実際の住み心地は分かりませんが、適切にメンテナンスされておりお洒落に経年していると感じます。

本建物は現借地人が2006年4月に売買で取得しています。

 

次に土地賃貸借契約書について記載します。

1992年12月に貸主:現底地人の父、借主:個人とする土地賃貸借契約書が締結されています。

時系列から推測するに、借主(娘・親族等?)が自宅を必要となり上記土地賃貸借契約を結び、その後の1993年6月に当建物を贈与したのではないかと思います。

また南側土地も現底地人の所有(今回の競売対象)であり、父が当地で畑をしていたという記述があります。

 

下の写真は、南側から手前の畑と対象地を撮影したものです。

 

地代は、275,668円/年(420円/月/坪)で、固定資産税倍率は4.9倍という事なので標準的な水準であると思います。

なお過去の地代改定の経緯等は記載が無いため不明です。

 

特記事項としては、

・現借地人が建物所有した際に「借地権譲渡承諾」を地主より得ていないものと考えられる。

・2012年12月31日で当初賃貸借契約は満了しましたが、更新の契約を締結しておらず更新料の支払いも無いこと。また借地人は法定更新していると主張している。

点です。

 

更新料に関する判例においては、更新料を必ずしも払う必要は無く法定更新が出来るとする事例が多いですが、敢えて更新料を払う事で今後の建物建替え・増改築承諾を得やすくするために地主との関係を良好にしておくという効果が期待出来ます。

 

 

では、入札価格の査定をしたいと思います。

実は、この物件は入札しようと考えていたので、裁判所から入札用紙を貰い記入までしていました。

ですが、別途資金需要が発生したため、やむを得ず断念しました。

個人的には、底地案件がとても面白く感じています。

理由は、リスクが殆ど無い事。つまりテナントを募集する必要が無く、滞納があれば借地権の解除条件となり、土地が完全所有権になること。

その完全所有権となるボーナス分がとても大きいからです。

今後も底地案件を追っていきたいと思います。

 

評価手法としては底地なので、安定収益物件としての収益価格(利回り商品)として価格を導き出すのが標準となります。

なお、競売案件では無く借地人と直接話が出来るのであれば借地が抹消され完全所有権となる可能性を加味した金額を査定すべきかと思います。

 

まずは更地価格がどの程度なのか、地価公示を見てみると185,000円/㎡(61万円/坪)で津波リスクが再認識された2011年の東日本大震災以降もそれ程影響が無い事が分かります。

なお、アベノミクス(金融緩和)により地価・マンション価格が上昇が上昇しているという話題を聞く事があるかと思いますが、特に土地の価格については東京だけの話でその他の地方は良くて横ばい・過疎地域は下落となっているのが実態です。

 

日本国の成長、つまりGDPの成長が無ければ対象地の地価が上がる事も無いものと推測されますので、少子化が続く事を鑑みると地価は横ばい程度と考えておいた方が良いと判断しました。

 

鑑定評価書による更地価格は、137,000円/㎡と査定されています。

相続税路線価の借地権割合:60%(底地:40%)より、本件底地価格を892万円とし更に底地の市場性が劣ることによる減価▲20%を考慮して、適正価格714万円(グロス利回り:3.9%)と結論付けしています。

本件の場合は、競売なので更に▲30%減価させ500万円(グロス利回り:5.5%)を売却基準価格となっています。

 

現行地代は、妥当な水準であることから増額改定の期待は低いと考え、現賃料を標準とすると共に、収益物件として投資家に売却できる価格水準としてグロス利回り:4.0%とした売却金額を689万円と査定。

そこから競売による流通税・売却時の手数料並びに再販業者の利益20%超を控除して、入札価格を

523万円(グロス利回り:5.3%)

と査定しました。

私は、この金額で入札しようと考えていました。

 

なお、一番強い価格を提示できるのは借地人ですので、仮に借地人が本競売に参加されていれば、勝ち目は無いと思います。

 

本日(1/26)17時が入札締め切りです。

落札結果が出ましたら、お知らせ致します。

 

仲田リアルエステート株式会社

080-6631-3939

 

2021年2月2日更新

 

残念でした。

落札金額は、

7,216,000円 基準価格の1.44倍

で6人参加で法人が落札しています。

借地人は個人ですので、借地人が落札したのではないものと思料します。

 

当落札金額でのグロス利回りは、

3.8%

と4%を切った水準となっていますので、突っ込んだ水準ではないかと感じています。

 

一方で、その南側の土地は1社のみの応札であった模様で、

1,745万円の売却基準価格に対して1,812万円と1.03倍でありまた(通路部分面積を除く)単価としては、27.8万円/坪と割安な水準となったと感じます(周辺の相続税路線価:45.5万円/坪)。

 

引き続き底地案件があれば検討していきたいと思います。

 

仲田リアルエステート株式会社

080-6631-3939

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