通常の不動産流通には出てこない、レアな物件が出てくるのも競売の面白いところです。
場所は、「秋葉原」駅から昭和通りを超えて徒歩1分の高架下店舗と好立地ではありますが、土地の権利が賃借権であり建物も古いことから難易度は非常に高いです。
まずは場所を見ましょう。
秋葉原駅側から昭和通りを見た写真です。
通りを超えた先に見えるラーメン幸楽苑の裏手に本物件があります。
総武線の高架下のくぼ地に合わせて店舗を上手く設計して建てられている事が、下の写真よりお分かりになるかと思います。
1Fにセブンイレブン、2F~4Fにさかなや道場の居酒屋が入居していました。当居酒屋へのアクセスはセブンイレブン横のスペースから階段でアプローチする形式です。
競売3点セットに記載されている物件概要を見ていきます。
一番の懸念点は土地の権利が賃借権(土地所有者はJR)であることです。
しかも当土地(高架下)賃貸借契約書第14条2項に
「賃借権の譲渡禁止」
が規定されている(当借地契約書は非開示)との注記があります。
本譲渡禁止条項について確認すべくネット検索でヒットした㈱ジェイアール東日本都市開発に電話確認したのですが、結論として当ご質問には回答出来ないという、役所のような冷酷な回答を受けてしまいました。
競売で落札しても仮に当土地賃借権の譲渡が認められないと、土地の権利の無い無権原者となるのでJRから即時に建物収去を命じられる事となります。
過去に地主の承諾が得られず大問題が多かったのでしょう、今は借地借家法により地主の承諾に代わる許可を裁判所から取得できるのが一般論です。本件の場合のように、条項で禁止されている場合でも裁判所の許可が取れるのかは、弁護士等に確認が必要かと思います。
土地(高架下)賃貸借契約書の主な内容
・期間:2017年4月1日~2047年3月31日(30年)*合意更新済み、当初開始日:1987年4月1日(30年)
・借地面積:152㎡
・地代:2,450,200円/年(4,440円/月坪)
・敷金:1,634,000円(地代の約8ヶ月分)
*地代改定条項・権利金・更新料については開示資料に記載なし。
続いて建物の賃貸借契約を見ていきます。
1棟全てをチムニー㈱が賃借し、そのうち1階部分をセブンイレブンへ転貸(オーナー承諾あり)しています。なお、賃貸面積は建物謄本面積・転貸面積は1Fの90%相当と想定しています。
いつも不思議なのが、競売3点セットでは賃貸面積の記載が省かれています。この情報はあったほうが賃料の妥当性の把握の為有益であると思いますので、開示してもらいたいです。
以上より、年間賃料は4,560万円となり売却基準価格に対するグロス利回りは16.8%です。
入札金額の査定へと進めたいと思います。
本件の借地権付建物の最有効使用としては、その立地の良さから店舗としての利用であり、需要者としては収益物件として投資する投資家であると考えられることから、収益価格での取引されるものと思料します。
では、収益価格を見ていきましょう。
まず賃料は、上記の通りで@26,354円/建物面積坪単価となっています。
コロナ禍の現状の集客を考えると、本件賃料を負担するのは非常に困難であると思いますが、不動産としての長期的な目線での賃料として現行賃料の▲5%として査定してみました。
続いて費用ですが、本件のような1棟店舗の場合、建物の維持管理費をテナントが負担している事が多い実態を考慮すると共に水光熱費も同様に考え、借地地代を加え、約550万円/年と求めました(経費率:13%)
最も厄介な利回りの決定です。
①借地権
②築古の旧耐震建物(&容積率オーバー)
③コロナ禍での店舗ビル
であることから、不動産担保ローンは使いないでしょうから、現金ないしコーポレート借入での購入となり、また金額も2億と大きいことから、購入出来る層はかなり限定的になるでしょう。
イメージとしては、ラブホテル・パチンコ店を買うような利回り感であると思います。
以上より、出口の想定NOI利回りを
13%(グロス約15.7%、延床単価約200万円/坪)
売却価格:291百万円
を前提に購入価格を
235百万円(グロス19.4%、延床単価163万円/坪)
売却基準価格の88%
と試算しました。
12月23日の結果発表を待ちたいと思います。
仲田リアルエステート
080-6631-3939
nakata.re@outlook.jp
2020年12月24日更新
こちらの案件は、
取り下げ
となっておりました。
難易度の高い物件でしたが、任意売却で手を挙げた会社があったのでしょうか?
再度競売となりましたら、お知らせ申し上げます。
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