ヴィンテージマンションと呼ぶに相応しいマンションが競売となりました。
1964年の東京オリンピック前に本マンションは竣工しており、このキュービック型のお洒落な外観が特徴的です。
銀座にある「中銀カプセルタワービル」(1972年竣工)を思い起こさせますが、それよりも本物件は古いです。
またこのビルの地下2階にあるメキシコ料理店「フォンダ・デ・ラ・マドゥルガーダ」も有名で、軽快なリズムと共にバンドたちが歌いながら席を周る楽しいレストランであり、料理も本格的な美味しさです。
私も数年前に利用させて貰いましたが、記憶に残る名店です。
建物外観の動画も撮りましたので、ご覧頂ければと思います。
さて、場所は明治通り沿いの神宮前2丁目で「原宿駅」から徒歩8分、また副都心線も利用可能なファッション関連の企業・店舗が多いエリアに位置します。
現地調査は原宿駅の竹下通りを通り向かったのですが、1F路面店賃料が10万円/坪以上であることからも営業継続が難しいようで、閉鎖店舗が多く見受けられました。撮影は、平日の日中ですので人通りはまばらです。
物件概要について確認していきましょう。
(対象には3.68㎡の地下倉庫が含まれていますが、面積には含めていません。)
一見して専有単価:270万円/坪が高いなぁと感じました。
ざっと周辺相場を調べてみると、リニューアルされた同年代の物件で坪300万円~350万円であることから、業者が再販前提で買う値段では合わないと感じました。
なぜ売却価格が高いのかは、後で確認していきます。
なお、本物件はオーナーが住居から事務所へ用途変更(浴室撤去)しています。マンションとしては事務所(SOHO)利用も可能な管理規約となっているものと思料されます。
方位は南東向きで、明治通りとは反対側ですので騒音等は少ないものと思います。
南側にはトルコ大使館がありますが、本物件は6階であり4層程度ですが本物件は階高が低い事を考慮すると、ギリギリ眺望が抜けるか・向かいの屋上ビューとなるか微妙ですが、写真②の南東側を写したもの(下写真の左上)が太陽の光で白くなっていることから推測するに恐らく抜けているのではと推測しました。
場所柄と合致して対象不動産も服飾関連会社の事務所として使用していたものと見受けられます。
なお、ヴィンテージマンションと呼ばれるかつての贅を尽くした共用部・キッチン・浴室等の写真は本建物名「ビラ・ビアンカ」と検索頂ければ出て来ますので、是非ご覧ください。
では、入札金額の査定へと進めます。
最有効使用の判定ですが、自用のマンション或いは自宅兼事務所(SOHO)としての取引事例(専有単価)が主となるか、事務所用に賃貸する前提での収益価格が主となるのか、判断が難しく感じます。
現状事務所に用途変更している事、売却基準価格(270万円/坪)が高く大規模なリニューアル工事をしてしまうと、販売価格を下回る可能性もある事を総合的に考えると、残置物の撤去+キッチン等のリニューアル程度に留めてリーシングを行い、収益物件として売却するのが最も高く価格提示できるのではないかと判断しました。
まずは競売評価書の金額について確認します。
積算価格(現在の土地+建物価格):141,910千円!
収益価格:63,210千円
上記2価格の間には2倍以上の価格差が発生しています。
理由は、本物件の敷地権が全体の1/44=2.27%保有しており、土地の価格が137,550千円(土地割合:97%)あることに起因しています。
付け加えますと、本物件は建て替え計画があるとの記述を売却中物件のパンフレットで見かけました(競売評価書には記載なし)。
つまり、本物件を購入し建て替えがなされると積算価格水準の価値となるという事を意味します。
対象地で新築のマンションが出来るとなると、専有坪単価で800万円~1,000万円になるのではないかと思います。
仮に現在の25坪に800万円を掛けると、2億円となります。建物の再調達専有坪価格を150万円/坪とした場合の土地価格は1.6億円と計算出来ることからも、当該地の土地の価格の含み益が高い事が分かります。
実際に再開発となる実現性・時間的なスケジュール間(お金が寝てしまう期間)・権利調整等を考慮して、どの程度再開発バリューを評価に入れるかで入札金額が異なるものと考えられます。
収益価格の試算をしたいと思います。
賃料水準としては、同じマンション内に賃貸事例が数件見つけることが出来ました。
相場としては15,000円/坪前後であると判断しました。月額賃料:39.5万円です。
想定のPM費用、維持管理費・固都税実額、リーシング費用等を控除してNOIを3,402千円/年と査定(鑑定評価書ではNCFが4,304千円/年と高い数字となっています)。
価格を決めるNOI利回りの想定が難しいです。
築古・旧耐震でローンが付きづらいとネガティブ要素を考えれば幾らでも出て来ますが、昨今の金余りによる利回りの低下は著しいものがあります。
3.8%(グロス利回り:5.3%)
と専有単価:約340万円/坪との兼ね合いを考慮して、決定しました。出口収益価格:8,952万円
なお、現在売り出している物件として、401号室:82.82㎡ 8,000万円(税込)*319万円/坪。
直近の成約事例は登録が無く、2016年のやや古い成約事例で250万円/坪で参考程度。
この出口価格を前提に、競売取得時の流通税・リニューアル工事費用・残置物撤去費用・販売時の仲介手数料等を控除し、転売業者の利益を差し引いた
7,000万円(売却基準価格の98.6%) 265万円/坪
と査定しました。
本音としては、もう少し安く仕入れないと業者利益がターゲットに届かないと思うのですが、築浅マンションの競売において私の想定以上の価格での入札があったことを考慮して、価格付けをしてみました。
開札日は2021年2月17日です。
仲田リアルエステート株式会社
080-6631-3939
2021年2月18日更新
入札結果が出ました。
77,810,000円(295万円/坪)
現在販売している401号室の単価:319万円/坪と▲7.5%としか違いはなく、競売だから安く買えるというのは幻想であるという水準まで価格が上がっている気がします。
入札参加者は5名で法人が落札したと記されていました。
マンション案件については、私の査定の価格感の見直しが必要であると感じています。
仲田リアルエステート株式会社
080-6631-3939
No responses yet